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【名古屋市北区】雨空に輝いた、地域の温かな輪! 名古屋市北区発「おつきみどろぼう」開催レポート

一軒のコロッケ屋から始まった、新しい秋の風物詩

「お月見どろぼう」東海地方の一部地域には、子どもたちが月の使いとして家々を回り、お供え物をこっそりもらうという風習がありました。

見かけることの少なくなったその温かな風習を現代に復活させ、地域イベントとして定着させたのが、今回レポートする名古屋市北区の「おつきみどろぼう」です。

2025年10月11日(土)、北区大杉学区を中心に西区や東区も巻き込み、約60軒のお店や家庭、お寺、幼稚園が参加する大規模なまち歩きイベントとして開催されました。
もとは2022年、北区大杉の「コロッケ屋みね」一店舗から始まったこのイベントは、今や1000人近い参加者を集める地域のビッグイベントへと進化を遂げています。

雨にも負けず! 熱気に包まれたスタート

この日の名古屋はあいにくの雨模様。

それでも、子どもたちの「おつきみどろぼう」への熱意は冷めることはありませんでした。
天候の崩れを懸念し、公式の13時スタートを前にフライングでお供えを始めた店舗もちらほら。
Instagramなどで情報が拡散されたため、正午過ぎにはすでに多くの会場で行列ができていました。

動きやすいレインコートを着用している子どもたちも多く、元気いっぱいのやる気と強いワクワク感を感じさせました。
中には片手で傘を、もう片手で地図を持ちながら目を輝かせている子の姿もあり。

肩を寄せあい、地図を確認し、次の目的地を見つける姿は、雨の中のまち歩きにほほえましい活気を与えていました。

イベントを企画した「コロッケ屋みね」の店主・みねさんは、「子どもたちが、この個性的な街の温かさに触れ、未来へつながれば‥」と語っていましたが、まさにその思いが雨空の下に集った多くの親子に伝わっているようでした。

巡るたびに感じる、地域の多様な温かさ

まち歩きのメインは、参加店舗やスポットを巡り、知らなかった場所、お店に出会うこと。
子どもたちは元気に「おつきみどろぼうです!」と声をかけ、さまざまなお供えを受け取ります。

まず訪れたのは老舗の「餅冨」さん。まだ12時過ぎにも関わらずすでに長い行列ができていました。
ここでは「くずバー」、名古屋独特の「月見だんご」を選ぶことができました。
名古屋の月見だんごは「しずく型」で、これは里芋を模したものとされています。
伝統的な秋の風習を食を通じて学ぶことができる、嬉しいお供えです。

そして、このイベント発祥の地ともいえる「コロッケ屋みね」では、丸い形をした特製コロッケが提供されました。
揚げたてアツアツでサクサクのコロッケは格別で、心と体を温めてくれました。

その他の会場でも、定番の駄菓子はもちろんのこと、おもちゃや、フェアトレードのバナナなどユニークお供えが並んでいました。
中でも特に印象的だったのが、金城市場のお供え。マリーゴールド、コスモス、せんにちそうの「種」でした。

これは、単なるお菓子以上の、「未来への希望の種」

子どもたちが受け取った種を家に持ち帰り、次の季節に美しい花を咲かせるように、このイベントが地域に蒔いた温かい思いが、未来のまちの彩り豊かな芽吹きにつながることを願う、素敵なメッセージが込められているようでした。
単にお菓子をもらうだけでなく、多様な地域のつながりや価値観、そして未来を感じられるのが、北区のおつきみどろぼうの最大の魅力です。

宝探しのような楽しさ、そして地域の「見守り隊」

今回のイベントのもう一つの特徴は、初めて設置された55体の手づくり看板「とび太くん」。

子どもたちは地図を広げ、おつきもどろぼう参加店の目印であるポスターと、とびた君を探しており、まるで宝探しのよう。
先を急ごうとする子どもたちに保護者が「とび太くんが『雨の日も気を付けてね』って言ってるよ!」と声がけする光景や、「とび太くんと同じポーズをしよう!」と、記念写真を撮る姿も多く見られました。
「とび太くん」は、安全面と、楽しい思い出づくりに一役買っていました。


この「とび太くん」は、地域ぐるみで子どもの安全を見守る「見守り隊」のシンボルとしても機能し、地域に「緩やかなつながり」と「温かい見守り」を生み出していました。

ハートフルな繋がりが紡ぐ、新しい文化

雨という悪条件にも関わらず、多くの子どもたちとその保護者が参加し、大盛況に終わった北区のおつきみどろぼう。

このイベントは、単にお菓子をもらうこと以上の価値を地域にもたらしています。
それは、「地域に愛着が生まれる、ハートフルで緩やかな繋がり」。
子どもたちは、普段通り過ぎるだけのまちのお店や人に「おつきみどろぼうです!」と声をかけることで初めて向き合い、人々の温かさに触れます。

「コロッケ屋みね」から始まったこの小さな試みは、子どもたちの笑顔と、地域の方々の熱意によって、名古屋市北区の新しい地域文化として、深く根付きつつあります。

来年以降も、この温かい風習が次の世代へとしっかりと受け継がれていくことでしょう。
雨空の下で見つけた、北区の温かいコミュニティの絆を強く感じる一日となりました。