名古屋市北区の住宅街に佇む「長喜温泉（ながきおんせん）」は、創業60年以上続く“まちの銭湯”。
遠方からサウナ好きが足を運ぶ 名古屋屈指の激熱サウナ と、昔ながらの薪ボイラーで沸かす 地下水のやわらかい湯 が名物です。
そしてもう一つの魅力は、番台に座る 81歳の看板娘・おばあ の存在。
レトロな空気と人の温度が残る、北区ならではの人気スポットです。
今回、サウナ初心者の私が“昭和ストロング銭湯”を初体験してきました！
81歳の看板娘“おばあ”が迎える、あたたかな銭湯時間
外階段の暖簾をくぐり、二階の入口を入ると、番台についた2代目女将・フミさん（通称：おばあ）がにこやかに迎えてくれます。
地域の人からも「おばあ、今日も元気だね！」と声がかかる、長喜温泉の象徴のような存在です。
長喜温泉のSNSでも“踊るおばあ”の動画が大人気。シュールでかわいいその姿は中毒性があり、ループ再生してしまうほど。
入浴料金は大人（中学生以上）500円、サウナは+100円。
シャンプーやボディソープは備え付きがないため、お風呂セット持参がおすすめです。
昭和レトロな空間に包まれながら…噂の“激熱サウナ”へ
脱衣所から浴場へ足を踏み入れると、昭和の銭湯らしいやわらかな湯気に包まれます。
浴場には、
- ラドン風呂
- 泡風呂
- 電気風呂
- 打たせ湯
- 高温風呂
と、昔ながらの湯舟がそろっていて、どこかほっとする雰囲気です。
そして本日の目当てのサウナへ—。
黄色いサウナタオルを手に扉を開けると、温度計には 110度 の表示。
日によってはさらに高いこともあるのだとか。
サウナ初心者の私は、開始2分でギブアップ寸前。
その後の水風呂は指先だけで「ヒィッ」と声が出る 11度。
一般的な水風呂（16度前後）よりはるかに低い、まさに“昭和ストロング”仕様です。
2回戦で気づいた“長喜温泉のサウナの良さ”
一度落ち着こうと40度前後のラドン風呂へ。
壁には孫娘ミナさんが描いた壁新聞が貼られ、「おばあの人生相談コーナー」がほっこり笑える内容。湯舟のやわらかさと相まって心がゆるみます。
気を取り直して、サウナへ。5分の砂時計を凝視しつつ、じんわり噴き出す汗を味わいながら集中。
110度なのに息苦しさが少ないのは、湿度のバランスが良いからかもしれません。
再度、水風呂へ向かうと、先ほどは指先しか入れなかった11度の水に肩まで一気に入れました。
身体の芯まで温まった後の冷水は、確かにクセになる心地よさ。
常連さんらしき女性は「ここのサウナと水風呂は美容にいいのよ〜」と余裕の表情。
肌がゆで卵のようにつるっとしていて、思わず納得です。
外気浴スペースはありませんが、広めの脱衣所ベンチでクールダウン。
ふわっとした脱力感に包まれ、整う感覚を味わえました。
地下水×薪ボイラー。銭湯の裏側・リアル釜じい”が守る火。
長喜温泉のお湯は、いまでは珍しい 地下水を薪ボイラーで沸かす昔ながらのスタイル。
この釜場を守るのが、常連さんから“リアル釜じい”と呼ばれるヤナさん。
廃材を組み合わせ、形も大きさもバラバラの薪を燃やし続けながら温度を調整するのは、想像以上に難しい仕事。
真夏は灼熱、常に火と向き合う職人技です。
その手間ひまが、長喜温泉ならではの“肌にやさしい湯”を生んでいると知り、湯舟に浸かる時間がさらに大切に感じられました。
コロナ禍で気づいた“守りたいもの。孫・ミナさんの挑戦
取材日は比較的空いているという木曜の15時過ぎ。
番台のそばで、孫娘のミナさんにお話を聞くことができました。
コロナ禍で客足が減り、長喜温泉は存続の危機に直面。
その姿を見て、
「おばあちゃんが守ってきた場所をなくしたくない。
そして地域の人が大切にしてきたこの銭湯を未来につなぎたい。」
という思いから、広報担当として立ち上がったのだそうです。
SNSでの情報発信、レトロでかわいいオリジナルTシャツづくり、イベント企画…。
若い視点を活かしながら、新しいお客さんにも銭湯の魅力を伝えています。
老朽化や光熱費の高騰など課題は多いものの、“まちの湯を未来へ”という思いがまっすぐ伝わってきました。
初めてでも大丈夫。町の銭湯には“地元の温度”がありました
初めて町の銭湯へ行くと、ローカルすぎて少し緊張しますよね。でも長喜温泉はとてもあたたかい場所でした。
常連さんがさりげなく声をかけてくれたり、使い方を教えてくれたり。
おばあのニコニコした笑顔、懐かしい湯気。
どれも“地域に息づく日常”そのままです。
昭和レトロな町の銭湯で、体も心もじんわり温まる時間。
名古屋でサウナを楽しみたい人にも、地元の空気を味わいたい人にも、訪れてみてほしい一軒です。
■施設情報
長喜温泉（ながきおんせん）
住所：名古屋市北区長喜町2-18
電話番号：052-912-1013
定休日：火曜日
営業時間：14：00〜22：00
Instagram
※営業情報は訪問当時のものです
この記事は、過去にYahoo!ニュース エキスパートへ寄稿したものを、本サイト用に情報をアップデートし、リライトしたものです。
