名古屋市北区、地下鉄黒川駅からほど近い場所に、長年地域に親しまれてきた串かつ店があります。
赤い文字の看板が目印の 「菊井かつ 黒川店」 です。
2024年3月下旬をもって休業予定と聞き、長年地域に寄り添ってきたこの店を訪ねました。
黒川で長年親しまれてきた串かつの老舗

菊井かつは、もともと名古屋市西区菊井町に本店を構え、戦後間もない頃から営業を続けてきた老舗。
現在の黒川店は昭和37年に開店し、60年以上にわたり、名古屋市北区・黒川エリアの日常に寄り添ってきました。
本店は2014年に閉店しましたが、その味と看板を受け継いできたのがこの黒川店。
テレビ取材は長年断り続け、派手な宣伝はせずとも、静かに根付いてきた一軒です。
名物は、ここでしか味わえない馬肉の串かつ

菊井かつの看板メニューは、馬肉の串かつ。
豚や牛が主流の串かつ店の中で、この馬肉串かつは唯一無二の存在です。
馬肉串かつの味わいについては、過去に訪問した別記事で詳しく紹介しています。↓

今も一本一本手作業で串を打ち、特製のバッター液をまとわせて揚げる製法は創業当時から変わりません。
名古屋ではみそ串かつが定番ですが、こちらはウスターソースでいただくスタイル。
愛知県清須市の太陽食品が手がける「日乃鳥ソース」を使い続けているのも、長年のこだわりです。
赤身中心で脂が少なく、揚げたては衣が軽やか。
ランチタイムに訪れても食べやすく、単品5本440円という価格も、庶民の店らしい良心的な設定でした。
昭和の面影を残す店内と、変わらない距離感

店内はカウンターと小上がり、奥には座敷。
昭和の面影を色濃く残した空間は、どこか懐かしさを感じさせます。
女将の兼松さんは、かつて本店を切り盛りしていたご夫婦の娘さん。
黒川店の女将として、先代の味と店の空気を守り続けてきました。
従業員は全員女性で、平均年齢は約70歳。
30年以上勤める“看板娘”の存在も、この店の家庭的な雰囲気を支えてきました。

休業を決断した背景にある、建物と人の問題
2024年3月下旬をもって、菊井かつ 黒川店は休業に入る予定です。
理由のひとつは、建物の老朽化。長年使い続けてきた店舗には、少しずつ無理が生じていました。
もうひとつは、従業員の高齢化と人手不足。
新たな人材確保が難しい中で、営業を続けること自体が大きな負担になっていたといいます。
「閉店」ではなく「休業」という選択
取材の中で印象的だったのは、「閉店」ではなく「休業」という言葉を選ばれたこと。
後継者や人手が見つかれば、再開の可能性がゼロではない——そんな思いが込められていました。
「長年通ってくださったお客さんのためにも、この味は残したい」
その言葉からは、地域とともに歩んできた店だからこその葛藤が感じられました。
なくしたくない、街の記憶としての一軒
家族で訪れた思い出、仕事帰りに立ち寄った日常。
菊井かつは、名古屋市北区・黒川という街の記憶の中に、確かに存在してきた一軒です。
休業を前に、あの馬肉串かつの味をもう一度。
そう思わせてくれる、地域にとって大切な店でした。
(本記事は2024年2月時点の取材内容をもとに構成しています。)
【店舗情報】
- 店名 菊井カツ 黒川店
- 住所 名古屋市北区敷島町10
- 定休日 月・火
- 営業時間 昼11:30~14:00 (L.O13:30) 夜17:00 ~20:30 (L.O19:45) 日曜日は夜営業のみ
※営業時間・定休日は取材当時の情報です。
追記:休業からその後
休業のお知らせの後、惜しむ声が多く寄せられましたが、営業再開されることはありませんでした。
店舗建物は取り壊され、更地となりました。
