「ここ、まだやってるんだ――」
名古屋市西区・中小田井。車で近くを通りかかった時、ふと目に入った赤い看板。子どもの頃、父に連れられて何度も訪れた町中華「大珉軒(だいみんけん)」が、今も変わらずそこにありました。
時代が移ろい、周りの景色が変わっても、そこだけ時間が止まっているような不思議な存在感。気づけば、懐かしさに背中を押されるように店の扉を開けていました。

入店した瞬間によみがえる記憶
店内に足を踏み入れた途端、鼻をくすぐるニンニクと炒め油の香り。
鉄鍋を振る音が小気味よく響き、思わず「そうそう、この感じ!」と胸が高鳴ります。
座席はテーブル3卓と2人席がひとつとこぢんまり。子どものころより狭く感じるのは、自分が大人になったからなんでしょうね。

カウンターには懐かしのピンク電話が鎮座していて、「あれ、もしかして昔見た電話そのまま?」と目を疑いました。
同行した我が子は「これが電話?」と首をかしげます。そう、今どきの子はダイヤル式を知りません。穴に指を入れて回す発想がないんですね。

壁には年季の入ったメニューの貼り紙。
ラーメン一杯550円からとリーズナブルで、価格も昭和のまま止まっているかのようです。

テーブルの下には雑誌や新聞を差し込める棚。
子どもの頃、料理が出てくるまで夢中でマンガを読み、切りのいいところまで読みたいのに、「早く食べなさい!」と両親に小言を言われたことを思い出しました。
40年近く昔の記憶が、油の匂いや椅子の硬さと一緒に一気によみがえる――まさに「タイムスリップ体験」です。
名物・特製ラーメンを再び

今回注文したのは、当時から変わらず人気の「特製ラーメン」。
丼から立ちのぼる湯気には、たっぷりのニラとニンニクの香り。見た目からしてスタミナ全開です。

スープをひと口すすると、パンチのある醤油ベースにニンニクの旨みがしっかり溶け込んで、食欲をかきたてます。
少し細めの中華麺が、その力強い味をしっかり受け止めています。

あのころ、父のお気に入りだったのも納得。
思い出フィルターがかかっているかもしれませんが、懐かしさと同時に「やっぱりこれは唯一無二だ」と確信しました。
町中華ならではの風景
昼下がりの店内。他には常連らしきお客さんが一人。瓶ビールに缶チューハイ、餃子で一杯やっていました。
肩肘張らないスタイルがなんとも庶民的。昭和の趣がそのまま残っています。

もしあなたにも「子どもの頃に通った町中華」があるなら、その扉をもう一度開けてみてください。
味や匂い、音や風景と一緒に、思いがけない記憶がよみがえり、胸の奥がじんわり温かくなるはずです。
そして「大珉軒」は、そんな体験ができる貴重なお店のひとつ。
ノスタルジックな雰囲気に浸りたい人も、ホンモノの昭和の町中華を味わいたい人も、足を運んでみてくださいね。
店舗情報
- 店名:大珉軒(だいみんけん)
- 住所:愛知県名古屋市西区中小田井5丁目305
- 電話:052-501-1009
- 営業時間:11:00 – 22:00
- 定休日:不定休
- 駐車場:店舗横の砂利の駐車場
※本記事は取材時点の情報に基づいています。現在はメニューや価格、その他の状況が異なっている場合がありますので、ご利用の際は最新情報をご確認ください。
